消費増税法案の審議が大詰めを迎え、野田政権と自民党の谷垣執行部が協力関係を築けるかどうかが最大の焦点になってきた。消費増税は実現するのか。政界の重鎮、森喜朗元首相(74)にジャーナリストの田原総一朗氏が切り込んだ。

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田原:肝心の自民党もどうやらバラバラになっています。森さんや古賀誠元幹事長(71)の世代は、消費増税をやったほうがいいと言っている。ところが、谷垣禎一総裁(67)や大島理森副総裁(65)、石原伸晃幹事長(55)は「一刻も早く衆院を解散して総選挙をやれ。消費増税はその後のことだ」と言っている。現状をどう見ていますか。

森:古賀さんや僕らはもう欲は何もないんですよ。ただ、ずっと今日まで自民党でやってきたことに対する責任があるんです。

田原:国の借金を1千兆円近くためた責任は自民党にありますからね。

森:その反省の上に立っていたら、幸いにも民主党から増税を言いだしてくれた。これを利用しないようなバカはいませんよ。

田原:むしろ感謝こそすれ反対する理由は何もない。

森:そうでしょ。野田さんが苦労しているんだから、できるだけ後押しして、引っ張ってあげなきやいけない。党利党略でもなんでもない。国家のためだ。

そもそも消費増税案については大した違いはないですからね。税率を8%にするか10%にするかなんて、大した話じゃない。毎年1%ずつ上げたっていい。重要なのは、それでもやってもらいたいと民主党が思っているんだったら、自民党の社会保障政策を大幅にとり入れればいいんですよ。

田原:マニフェストがデタラメだということは、民主党自体がよくわかっているんですよ。政権を取れば4年間で16兆縲鰀17兆円のムダを削減すると言っていたけど切れてない。それが前提だから意味がない。

森:それをダメだと言って蹴飛ばしちゃうのもかわいそうだから、一緒のテーブルについてやっていきましょうと言っているわけです。まさに議会制民主主義のいちばん成熟した形ですよ。

田原:それなのに、なんで谷垣さんや大島さんは「選挙が先だ」と言ってるの?

森:まあ、なんていうか、経験不足ですよ。

※週刊朝日 2012年6月15日号