日本を代表する巨大企業のトヨタ自動車とパナソニック。両社とも1930年代創業で、グループの従業員数も32万~33万人と同程度だ。ただ、近年になって業績面での隔たりが浮き彫りになってきた。

 週刊朝日が6月1日号で紹介した新指標「優良・ハッタリ度」では、会社側が見積もった業績予想に対して、結果が上回れば「勝ち」、下回れば「負け」とした。

 02年度以降の10年間を見ると、トヨタが9勝1敗に対して、パナソニックは6勝4敗。とくに07年度以降で違いが目に付く。

 専門家の意見を聞くと、主な要因のひとつは創業家の存在感だという。

 トヨタは09年、創業家としては6人目、4代ぶりに章一郎氏の長男・章男氏が社長に就いた。パナソニックは2代目の正治氏の後、創業家社長はいない。現在では正治氏の長男・正幸氏が副会長だ。

 トヨタはその後、米国のリコール問題で猛烈な逆風を受けたが、

「章男社長は10年2月に米議会の公聴会に出席した後、現地の販売店の交流会で涙を流した。それが米メディアで報道され、豊田家の御曹司の人間性が知れ渡った。これで明らかに求心力が高まった」(経済ジャーナリストの水島愛一朗氏)

 トヨタでは複数の役員が豊田家について、「おれらにとって『主君』」「一種の『ふるさと』」などと口にしていたほどだ。

 一方のパナソニックについては、

「幸之助氏のリーダーシップが強すぎた。幸之助イズムを受け継ぐ人材づくりが追いつかず、創業者を超える人が出なかった」(水島氏)

 だからこそ、大坪文雄社長が08年、社名から「松下」を外してパナソニックに変更したという。これを世界で通じるブランドに育て上げ、会社の求心力にしようとしたというのだ。

※週刊朝日 2012年6月8日号