自然エネルギー固定買い取り制度が間もなくスタートするが、その買い取り価格は太陽光発電が1キロワット時あたり42円、小型風力発電では57.75円と定められた。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、この値段にはある罠が潜んでいるのではないかと勘考する。

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 この買い取り価格は果たしてどれほど適正か? 答えは、毎月電力会社から送られてくる電気代の明細を見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)だ。日本の電気料金は、10の電力会社ごとに微妙に異なっているが、経産省主導の護送船団方式の下、おおよそ1キロワット時20円強というのが目安となっている。この数字を認識すると、自然エネルギーの買い取り価格がいかに高いかわかる。

 電力を買い取るのは当該地域の電力会社で、買い取られた電力は、電力会社が発電した電気と共に地域の家庭や企業に供給される。買値が42円で、売値が20円では電力会社は商売にならない。このギャップを埋めるのはすべての電力消費者の料金に上乗せされる特別徴収金だ。つまり買い取り価格がどんなに高値でも、電力会社の懐は一切痛まない仕組みとなっているのだ。

 電力の買い取り価格を高く設定することは、自然エネルギー参入事業者を増やし、脱原発を確実にするといわれている。しかし高すぎる買い取り価格は逆に、その地に合った自然エネルギー開発の動機を低下させ、適者生存の摂理を破壊し、新エネルギー全体の否定につながり、やがて世論を原発回帰へと向かわせるのだ。

 経産省の狙いは、ここにあるのだと思う。

※週刊朝日 2012年6月8日号