ひと昔前なら、「子どもがやるもの」と思われていた歯科矯正。しかし歯並びの乱れは、口元や顎(あご)のラインなどの容姿を左右するだけでなく、歯周病などほかの歯科疾患を誘発するため、大人になってからの治療を決意する人も増えている。

 岐阜県在住の専業主婦、江藤佳奈さん(仮名・45歳)は、歯並びが悪いと人から思われているような気がして「受け口と八重歯」が長年のコンプレックスだった。

 子育てが一段落した40歳の頃、受け口になっている部分の下の歯が4本、グラグラしてきた。

「最初は歯周病かしら、と思っていたのですが、市の成人歯科検診を受けたところ、『受け口になっている部分の上の歯が下の歯に負担をかけているのが原因です』と言われたのです」(江藤さん)

 診察した歯科医師からは、「ぐらつきはなおせない。どうしても気になるなら、義歯にするくらいしかない」と言われた。

「義歯にするにしても『1本8万円ほどかかる』と言われました。4本で32万円もかかるなら、思い切って歯並びを全部なおしたいと考えました」(江藤さん)

 と、歯科矯正治療を受けることを決意した。江藤さんは、かかりつけの歯科医院にどこで治療を受けるのがいいか相談すると、浅井矯正歯科院長の浅井保彦歯科医師を紹介された。

「大人になってからの歯科矯正はむずかしいと思われがちですが、特殊な場合を除き、治療は十分可能です。八重歯などの治療は、上下左右の小臼歯(しょうきゅうし)計4本を抜歯し、矯正装置をつけて目的の位置に歯を移動させます。その後、保定装置(リテーナー)と呼ばれる後戻りを防ぐための装置を一定期間装着すれば、すき間のない、美しい歯並びになります」(浅井歯科医師)

※週刊朝日 2012年6月8日号