いま検察内部で、熾烈な権力闘争が起きているという。一審無罪となった小沢一郎・元民主党代表(70)が控訴された5月9日付の産経新聞に、注目すべき記事が載った。

 田代政弘検事(45=当時は東京地検特捜部)による陸山会事件の報告書"捏造"疑惑を捜査していた検察・法務当局が、田代検事の起訴を見送る方針だというのだ。

 この産経記事を追うように他紙も次々と、この不起訴方針を報じた。

 だが、この間題は一検事の報告書"捏造"疑惑にとどまらない。

 本誌がかねて報じてきたように、検察審査会(検審)に提出された田代検事作成のものを含む6通の捜査報告書には、小沢氏の"悪質性"が執拗に書き連ねてあった。検察が検審を誘導する目的で作ったとしか思えないシロモノだった。

 小沢氏に無罪を言い渡した東京地裁も判決で、「検察審査会の判断を誤らせることは決して許されない」と厳しく批判し、真相解明を求めている。

 にもかかわらず、なぜ田代検事の「不起訴」報道が相次ぐのか。検察幹部が、こう解説する。

「実は、いま新聞やテレビが盛んに報じている不起訴説は、次の検事総長といわれる小津博司東京高検検事長に近い筋からのリークなんです。すべては、笠間治雄現総長の続投を阻止するためです」

"傍流"である笠間氏の次は主流に―――というのが既定路線だったが、ここにきて小津総長誕生が危ぶまれているという。

「笠間氏は、報告書問題など陸山会事件を巡る特捜部の捜査に対して厳しくメスを入れる姿勢を見せており、来年1月の65歳の誕生日まで続投する可能性が出てきた。だが、7月に63歳の誕生日を迎える小津氏側にとっては致命傷。検事総長の定年は65歳ですが、他の検事は63歳。笠間氏続投の場合、退官しなければなりませんから」(先の検察幹部)

 そこで、田代検事らを「不起訴処分」にすることですべてを丸く収めたいと、露骨なリーク攻撃に出たと見られるのだ。

※週刊朝日 2012年6月8日号