「動物王国」の創立者で、テレビの動物番組などで活躍した、ムツゴロウさんこと畑正憲さん(77)。そんな彼が最初に魅せられた生き物は"アメーバ"だったという。高校卒業後は、東京大学教養学部理科2類に入学。その後、理学部生物学科動物学教室へ進み、大学院では生理学を専攻して、アメーバの研究に着手した。当時を畑さんはこう振り返る。

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 なんで理科2類だったかっていうとね、当時は、そこから医学部へ行けたんです。僕は医者になる気はまったくなかったけど、父は頑として医学部以外は認めない。僕は作家に憧れていたから、文科へ移るのもいいと、ひそかに考えていたんです。

 結局、生物学を選びましたけど、作家を諦めたわけではなく、いろいろな雑誌の新人賞に応募したりしていました。でも、せいぜい佳作止まりで、これにはちょっと絶望的な気持ちになりましたね。

 生物学は面白くて、とくに修士課程でアメーバの研究を始めてからは、完全にハマった。原生動物のアメーバって命の原型で、同じ運動をする細胞が人間の白血球にもある。そこで自分の白血球を取り出して調べました。夢中になって研究をするうちに、アメーバを通して人間を描くという作家としてのテーマが浮かびました。

※週刊朝日 2012年6月8日号