会社側の業績予想には、業界や個別企業に特有の「クセ」があることはあまり知られていない。この業績予想と結果の長期傾向を見れば、クセや業界の動向が浮かび上がり、投資だけでなく、業界分析に役に立つという。

 これをもとに新たな企業指標を設け、金融情報会社T&Cフィナンシャルリサーチに計算してもらった。東証1部上場の225社について、過去10年間の「会社予想」と「結果」を比較したものだ。これらの会社について、結果が会社予想を上回るものを「勝ち」とし、「勝率」を計算した。すると、08年のリーマンショックにも負けなかった、逆風に強い企業が浮かび上がった。

 そのひとつが製薬だ。

「製薬企業は、医師が処方する医療用医薬品が売り上げの大半を占めています。不況でも薬を必要とする人は減らないのですから、他の業種と比べると、影響は少ないんです」(医薬品業界紙のベテラン記者)

 10年間の勝率を見ると、武田薬品工業や大日本住友製薬など大手企業は勝ち組と言える。5割以上をキープした企業が大半だ。

 だが、塩野義製薬だけが、08年度も負けたうえ、全体の勝率も2割しかない。

「わが社は、目標を高めに設定しています。社内の士気をあげる狙いもある。ただ、この3年間は、予想を『堅め』にしている」(同社)

 売り上げ目標は、社外に公表する金額よりも社内向けでは高く設定し、営業部隊を鼓舞しているという。しかし、直近3年間の経常利益は予想を達成できず、全敗している。業界歴30年を超える製薬企業の幹部が言う。

「大手企業が次々と経営統合して国際競争力を高めるなか、塩野義は、大きな売り上げが期待できる魅力的な新薬の『タネ』が少ないことで、統合相手が見つからなかったようです」

※週刊朝日 2012年6月1日号