ゴールデンウイーク最終日に突如発生し、大きな被害をもたらした竜巻は、日本中を震撼させた。

 5月6日の日本列島は約5500メートル上空に北から冷たい寒気が流れ込み、低空では津軽海峡付近の低気圧に、南からの湿った暖気が吹き込んでいた。大きな被害が出た茨城県つくば市の6日の最高気温は、6月下旬並みの25.8度だった。

 低空の軽い暖気が温度差の大きい寒気に近づいて勢いよく上昇、通常は高さ数キロ~10キロ程度の積乱雲が15キロ程度にまで発達し、竜巻や落雷、降雹(こうひょう)が起きやすい状況になった。「スーパーセル」という巨大な積乱雲になっていた可能性も指摘されている。

 名古屋大の坪木和久教授(気象学)は、巨大な積乱雲が形成された理由を次のように解説する。

「南西から、雲にとっての"ガソリン"ともいえる水蒸気を多く含んだ空気が、多量に流れ込んできたのが第1のポイントです。上空に入ってくる寒気の先端部分というのは、風の向きが高さとともに回転します。そういうところの大気下層に非常に湿った空気が入ってきたことで、竜巻を起こすことが多いスーパーセル積乱雲ができたと考えられます」

 竜巻は年間に10~30個程度の発生が確認されており、過去の発生地点は沿岸部と関東平野に集中している。関東平野で発生しやすいのは、

「平坦な土地が広大に広がっていて、南は相模湾から湿った空気が入ってくるし、東は鹿島灘から冷たい空気が入ってきやすい」(坪木氏)

 ためだ。さらに坪木氏は、ビルの立ち並ぶ都心でも竜巻は起きると指摘する。

※週刊朝日 2012年5月25日号