「健康な長寿」と「幸せな生き方」を両立させるにはどうすればいいのか。長寿を維持するには「腸が重要だ」と『腸! いい話』を書いた慶応大学医学部教授の伊藤裕医師に話を聞いた。

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 脳、心臓、腎臓、肺、胃や腸など、私たちの体はさまざまな臓器から成り立っています。年をとると、臓器の機能はしだいに衰え、病気を引き起こし、やがて死に至る。われわれの体の老いは、すなわち「臓器の老い」なんです。
 最新の研究から、臓器はそれぞれの時間を持っていることがわかってきました。心臓は、どのような哺乳類でも、一生で約20億回打つといわれています。心拍の速いものほど寿命は短い。ネズミの心拍数は1分間300回ぐらいだけど、人間の心拍数は、1分間に50から80回ぐらい。人間のほうがネズミよりずいぶん長生きですよね。人間も、脈が遅い人のほうが長生きの傾向があります。
 では、最も早く老いる臓器はなんだと思いますか。腸と腎臓です。私たちにとって食べることと排泄することは、一日も休みにするわけにはいかない。その機能に関わる臓器が、実は最も老いやすいんです。われわれの周囲には、高塩分、高カロリーの食品がたくさんあります。私たちはストレスのはけ口のように、そうしたものについ手を出してしまう。すると、「臓器の時間」は加速する。いったん加速し始めると、ドミノ倒しのように他の臓器も次々と傷んでいくんです。その悪循環です。
 睡眠不足気味の人。ちょっと鈍くさくなってきたと思える人。飽きっぽくなってきた人……。こうした人たちは、内臓が疲れ始めていますから、要注意ですよ。

※週刊朝日 2012年5月25日号