日本の男子バレーが金メダルを獲得した1972年のミュンヘン五輪。応援に行っていたオリンピックおじさんこと山田直稔さんは、まさかの行動に出た。その行動とは?

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「ミュンヘンの奇跡」と呼ばれた優勝への道のりは、準決勝のブルガリア戦がハイライトだったな。日本は2セットを先取され、後がなくなった第3セットも大きくリードされた。
 そこで、日本からやってきた若者たちが私に声をかけたんだ。
「団長、三三七拍子!」
 とね。この人たちとは試合前に知り合ったの。25人ぐらいの団体でね。入場券が手に入らなかったけど、「何とか応援したい」と思って来てたんだ。私はすでに会場の警備の人たちと顔見知りだったから、頼んであげたの。そしたら「俺は見てないから」というしぐさをした。それ、とばかりに25人を忍び込ませたの!
 彼らから声がかかって、三三七拍子をやってみた。バレーはタイムアウトの時間があるでしょ。その時間を利用してね。私はよく響く笛を持っていってたし、若者たちも大きな拍手をしてくれたから、「うわーっ」という雰囲気になった。日本にしかない独特のリズムで、会場全体を日本の応援に引き込んだんだ。

※週刊朝日 2012年5月25日号