2002年5月、山田淳氏はエベレストに登頂し、「セブン・サミッツ(世界7大陸の最高峰)」制覇を23歳9日の世界最年少(当時)で達成した。
 以来、丸10年がたつ。現役東大生だった青年は33歳となり、アウトドアベンチャー企業を創業し、社長として忙しい日々を送っている。
 山田氏は「登山業界から日本を変えたい」と言い、日本の山が持つ世界的にも珍しい「国際競争力」について次のように話している。

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 僕は、登山業界を変えることで日本を変えたいと思っています。
 僕は世界中の山を登りました。海外の自然は雄大だけれども、基本的に一年中変化はありません。しかし、日本の山には四季の移り変わりがある。雪化粧したり、紅葉で色づいたり、美しい表情をたくさん見せてくれる。こんな山は世界的にもすごく珍しいんです。
 僕は、この「財産」を生かした日本の観光立国を構想しています。たとえば、成田空港から入国した外国人が浅草寺へ行き、秋葉原で買い物をした後に富士山に登り、上高地を回って、京都に寄って関西空港から帰る―――そんなルートをスタンダードにしたい。そのとき、外国人が気軽に登山道具を借りることができる環境を整えておきたい。それもあって、僕は登山用品のレンタル業をやっているのです。
 日本の山には「国際競争力」があります。それはこの国の強みで、生かさない手はない。そのためにも、まずは日本人に、自国の山の素晴らしさをわかってほしいんですよ。

※週刊朝日 2012年5月25日号