広島の原爆ドーム上空に飛行機を飛ばして飛行機雲で「ピカッ」という文字を書いたり(2009年)、東京・渋谷駅にある岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」に福島原発事故の絵を付け加えたり(11年5月)―――。物議を醸すことも多い若手芸術家集団「Chim↑Pom」(チン↑ポム)だが、その6人組の紅一点はエリイ(28)。派手なファッションを好み、深夜のクラブに通う、一見、巷の「ギャル」だが、高校時代に現代アートに出会ったことをきっかけにアーティストとしての道を歩み始めたという。彼女に話を聞いた。

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 私が現代アートと出会ったのは、田園調布雙葉学園に通っていた高校時代です。当時、私は学園始まって以来の問題児。規律が厳しかったこともあり、呼び出し回数の最多記録を更新しました。
 小さいころから、どんなことに対しても「なんで?」「それって本当に合ってるの?」という疑問を強烈に考えてしまう子でした。テストの結果も散々。各教科を並べると、0点から7点までひととおり全部そろっちゃう、なんてことも……。
 そんな私に新しい道を開いてくれたのがアートでした。高校2年のときに、友達に誘われて行った横浜トリエンナーレ(横浜市で3年ごとに開催される現代美術の国際展覧会)で、すごく刺激を受けたんです。現代美術家の会田誠さんの作品との出会いもありました。それまで自分がモヤモヤと「なんで?」と思っていたことを、形にしている人がいる。それで、美術大学を受験する決心をしました。

※週刊朝日 2012年5月25日号