44年前のメキシコ・オリンピック(1968年)の得点王で、日本のサッカー銅メダル獲得の立役者となった釜本邦茂さん(68)。まるで昨日のことのように、釜本さんは当時の試合を振り返る。オリンピック期間中にはこんな事件もあったという。

*  *  *

 宿舎の入り口に立ってた男が、紙とペンを差し出して「ここにサインしてくれ」って言うんですよ。そのとき、たまたまコーチのデトマール・クラマーさんが通りかかって。「釜本、サインするなら紙いっぱいに大きく書け」と教えてくれた。紙一面に書いておけば、後から変な上書きはできないだろうって。クラマーさん曰く、ファンを装ったどこかの国のプロチームの関係者が、契約書にサインさせようとしていたらしいんですよ。

※週刊朝日 2012年5月25日号