世界的建築家の安藤忠雄氏。しかしそんな安藤氏であっても、思い通りにいったと思える仕事はほとんどないという。また、建築業界には「アンチ安藤」が多数いるとも打ち明ける。

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 建築家人生のなかで、思い通りにいったと思える仕事はほとんどないですよ。自分たちの思いと現実の条件が折り合わずに苦しむことも多いし、計画中断ということだってある。多大なエネルギーを注いでも日の目をみなかったプロジェクトはたくさんあります。
 コンペでも連戦連敗。負ければそれまでの努力は無効です。でも負けたときは勝ったやつを分析するんです。それは自分の「資源」になる。だから負けて一言も文句いったことないですよ。ダメだったら「ああ、そうですか」と、次に行く。
 いまでも「アンチ安藤」は建築界に多いですよ。「安藤が賞をもらった」「東大で教える」「震災の復興構想会議の議長代理をやる」、そういうことが気に入らない(笑)。いやホントに。でも、それはしかたがない。

※週刊朝日 2012年5月18日号