3年にわたる検察との壮絶な闘いの末、小沢一郎・元民主党代表は「無罪判決」を勝ち取った。判決が示していることは、これが"創られた"事件だということである。検察が仕組んだ事件とは。

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 小沢一郎・元民主党代表(69)に無罪判決が下された翌4月27日の全国各紙は、「政治的けじめ、どうつける」「説明責任を果たせ」などと、小沢氏の政治的責任を問う声の大合唱だった。
 ある意味、予想どおりの反応だとはいえ、とても「無罪」とは思えない"有罪扱い"の論調に、違和感を覚えずにはいられない。
 その"無罪でも有罪"の論拠は単純だ。
 東京地裁の大善文男裁判長は「無罪」としながらも、判決理由で、検察官役である指定弁護士の主張に沿い、元秘書である石川知裕衆院議員(38)らの政治資金収支報告書への虚偽記載を認め、石川議員らが土地取引や土地購入の原資となった4億円の処理について小沢氏に報告、了承を受けていた、と認定したからだ。
 これをもって、「主文は無罪だが、中身を読むと有罪」「無罪といえども限りなく黒に近いグレー」「裁かれたのは『小沢問題』の一部に過ぎない」とまで言われている。
 だが、その指摘はまったくあたらないといえよう。
 判決は、前述のように石川議員ら元秘書の虚偽記載は認めつつも、小沢氏の共謀については「認識が不十分であり、故意を欠くというべきである」と明確に否定している。
 元検事の郷原新信郎弁護士は、判決について「虚偽性の認識を否定したもので、メディアが騒いだ"違法性"の認識を問題にしたものではない」と評価した上でこう語る。
「そもそも小沢氏が問われた"共謀"の犯罪実体である、石川議員らの行為についても、結論として虚偽記入であることは認めているが、形式的、その場しのぎ的なものであり、悪質な"隠蔽・偽装工作"であることは否定しています」
 判決をよく読めば、ここで延々と認定しているのは、石川議員らが収支報告書に期日をズラして記入したという「期ズレ」問題と、小沢氏からの借り入れ4億円と銀行からの借り入れ4億円の両方を書くべきだったという問題である。つまり、単なる収支報告書の"書き方"の問題に終始している。
 これをもって、何が「有罪」だというのか。

※週刊朝日 2012年5月18日号