役所広司 映画は「監督の作品にかける情熱あってこそ」

週刊朝日
 昭和を代表する文豪・井上靖の自伝的小説を映画化した「わが母の記」で、主役を演じた役所広治さん。
 作品を選ぶ基準について訊ねると、しばらく考えてから、「監督ですね」と答えた。映画への出演が途切れることなく続いたことも、いい監督との出会いに恵まれたからだ、と。
「現場で、そこに関わる人たちが、自分たちの持つ力以上のものを発揮できるのも、監督の作品にかける情熱あってこそ。僕らが達成感を得られる瞬間というのも、限られた予算、限られた時間の中で、『ここ一発で決めるしかない』という状況に追い込まれたときなんですよ。みんなが気持ちをひとつにして、その緊迫した状況を乗り越えたときに、『やった!』と、自然に高揚します(笑い)」
 役所さんにとっての"いい映画の定義"とは、「ときを経て残る映画。何度でも観たくなる映画。観るたびに伝わるものが変わってくる映画」なのだそうだ。母と息子、老いといったテーマを丁寧に扱った「わが母の記」は、紛れもなく、人の心に叙情的な余韻を残す映画だ。そこに映し出される日本の風景の中に、彼のたたずまいは、美しく深く溶け込んでいく。

週刊朝日 2011年5月4・11日合併号
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