4月13日に発射された北朝鮮ミサイル。日本もパトリオット3を配備するなど、大きな騒ぎとなった。作家・室井佑月氏は放射能汚染問題での情報公開を引き合いに出し、今回は、政府の情報の出し方が不必要なほど国民に不安を与えていなかったか、とその報告内容や政府の姿勢に不信感を露わにした。

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 福島第一原発事故後、放射能汚染問題が出てきて、たしかその時は真実をそのまま国民に伝えるのは、「国民のパニックを煽る」ということで、いけないこととされていた。スピーディの情報なども隠しておいた。

 では、今回の北朝鮮のミサイル発射問題についてはどうなのさ。国は不必要なほど国民に不安を与えていなかったか。与えたところでどうにもならない不安を。

 考えてみてよ。放射能については、国民に情報を開示すれば、そこでどうにかなった人もいたはずだ。

 汚染地区を避けて避難するとか、汚染地区に住んでいるから食べ物には気をつけるとか、いかようにもやりようがあった。

 しかし、北朝鮮のミサイルについては、我々一国民にはどうにも出来ん。それなのに、あんなに大騒ぎするなんて。

 つまり、「国民の不安を煽る」とかいっちゃって我々のためを装っているけれど、すべてが国民にとってどうかというより、政府にとっての都合なわけでしょ?

 我々より特化した頭脳を持っていての判断、というのも違うな。

 北朝鮮は今回のミサイル発射、海外メディアまで招いて宣伝したかったんだからね。これだけ日本が騒いで、成功していたら向こうの思う壷だったろう。

 今回の政府の大騒ぎは、対北朝鮮というより、国民向けのものだった。

 万が一、日本に破片が飛んで来て、それをパトリオットで撃ち落とせて、それから先、どうなるのか。この国はどうするのか。政府がいちばんしなきゃならなかったことは、それについて考えることだった。でも、考えていたかね。怪しい。

週刊朝日 2012年5月4・11日合併号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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