フィリピンには一度も稼働していない原発がある。その原発が昨年5月に観光地となった。観光ツアーが始まって以来150組以上が訪れた。日本人も10組含まれる。現地学生たちとツアーに参加した内容をお伝えする。

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 学生たちは興味津々で、模型の写真をパチパチ撮る。この国唯一の原発「バターン原子力発電所(BNPP)」ツアーは、原発に関する30分の説明で幕を開ける。見学料はビーチ使用料込みで150ペソ(約300円)だ。

 ツアーはおよそ1時間。一度も稼働したことがないため、原子炉内部を覗くという世界でも稀な体験ができる。カメラ片手に遠足気分で見学を終えると、学生たちは併設のビーチへ移動し、昼食とカラオケでリゾート気分に。感想を聞くと口々に、「国の科学技術の進歩のために、稼働すべきです」「安くてCO2排出ゼロの発電なので、利用したほうがいいと思います」と、原発賛成を語った。

 私たちの車の運転手(50)も、「こんなすばらしいものがあるなら、早く動かしてほしい。そうすれば停電もなくなり、電気代も下がる」と声を弾ませた。フィリピンの電気代は日本並みで、収入が日本人の1、2割しかない庶民には、とてつもなく高い。

週刊朝日 2011年5月4・11日合併号