4月12日、具体的に脱原発依存への道筋を示すため、「脱原発ロードマップを考える会」(参加者約70人)を立ち上げた菅直人氏。首相時代でさえ、その立ち上げには難航したという。

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 2020~30年の間に原発をゼロにし、自然エネルギーを増やすなど、会として提案するたたき台の私案は、すでにできあがっている。しかし、一方で「脱原発を元の木阿弥にしよう」と狙っている勢力がいることも事実だ。経産省がやっている「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」の25人のメンバーの中にも、私たちと同じ考えの人もいれば、「2030年までに35%の原発を維持すべきで、新規でまだ、造る必要がある」と主張する人もいる。誰がどういう意図で発言しているのか、"目に見えない恣意的な意図"を政権はちゃんと把握する必要がある。

――恣意的な意図とは。
 例えば、経産省は私に知られないよう、浜岡を止める代わりに、その他のすべての原発は速やかに再稼働させるというシナリオを描いていた。しかし、私が「浜岡の停止はOKだが、他の原発の再稼働について保安院の承諾だけではダメだ、ストレステストを実施しろ」と言いだしたので、シナリオが狂った。役人は常に自分たちの省益を考え、そういう動きをするものだ。今、経産省内には再生可能エネルギー推進派もいるが、まだ原発を廃止するという腹はくくれていない。だから、省内には再稼働をテコに、脱原発をなし崩しになかったことにしようとする一派もいる。

――首相時代、脱原発を訴えたときですら、「個人的な見解」と政権、党内で異論が上がった。
 原子力村は40年がかりでできあがり、3・11前は巨大な権力があった。震災以降、影響力に陰りが出たが、潰れてはいない。だが、最後に決めるのは国民自身。「いつまでにこうする」という選択肢を示すのが政治の役割だ。

週刊朝日 2011年5月4・11日合併号