司会のアナウンスとともに姿を現した新入社員の中に、やけに老け込んだ体格のいい男が一人。

 4月18日、脱原発運動を続ける俳優の山本太郎(37)が、太陽光発電システム施工・販売会社「ソーラーリフォーム」(横浜市)の入社式に出席したのだ。

 集まった報道陣約70人の迫力に、他の新入社員たちは落ち着かない表情。この日のために新調したという約3万円(靴代込み)のリクルートスーツの山本は、時折笑みを浮かべながら、壇上に登場した。同社の清水勇介社長(36)から本社営業部勤務の辞令を受け取る場面では、固い握手を交わしながら"余裕"の笑顔を見せた。

 俳優から脱原発運動へ身を投じて1年、今度はサラリーマンへと転身か……と思いきや、どうもそう単純ではないようだ。

 同社によれば、山本は3カ月間の契約社員として採用された。研修後は企業や家庭への営業を担当し、成績次第で契約が更新されるという。当人は、「芸能界の仕事ができれば、なんでもできる」と自信満々だが、芸能活動は今後も続けるという。現に、入社式が終わるとその足で舞台稽古に向かっていた。

 営業の素人が兼業のうえ、たった3カ月で結果を残せるほど甘い世界ではないはず。中には、山本を単なる「広告塔」と評するメディアも出てきている。清水社長を直撃すると、「(広告塔を)ガンガンやっていただきたい」とまったく否定しない。

 入社式の後、報道陣に名刺を配りながら、「一軒家にお住まいですか?」と、初仕事に勤しむ山本の"商魂"を見ていたら、意外と営業が天職ではと思えてきた。

※週刊朝日 2011年5月4・11日合併号