料理研究家の行正り香さんは社会人になった時にひとり暮らしを始めたが、さみしいひとり暮らしにも、ペットがいると家に温度が生まれるという。

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 会社に入社した頃、意気揚々とひとり暮らしを始めた私でしたが、すぐに「ひとり暮らしは意外とさみしい」ということに気がつきました。
 そこで、ペットのインコを飼うことにしました。入社1年目にして出会ったピーちゃん。最初は全くなつかず、手乗りインコからはほど遠い存在でしたが、3、4カ月経った頃から急に私を追いかけるようになりました。
 ひとりでマンションに帰ってくるのはさみしいものですが、ドアを開けた瞬間に「ピー」と挨拶をしてもらえるだけで、その空間に温度が生まれます。帰りたくなる理由がなければ毎日外で飲み歩いて、カラダを壊していたかもしれません。ピーちゃんがいたお陰で、最低限の規則正しい生活を続けられた気がします。たとえ家族と一緒に暮らしていても、必ずしも心が通じ合うわけではありません。一匹の犬や、カメやグッピーがいるだけで、家の雰囲気ががらりと変わるはずです。
 ピーちゃんは炊きたてのご飯が大好きで、私が鍋でご飯を炊いていると、いつもキッチンのそばにきていました。ふわっと炊きあがったご飯を見た瞬間、熱々の米粒めがけて、突進!という感じでした。なつかしい時間です。

 本誌では「ねぎ豚キムチ丼」のレシピを紹介しています。

※週刊朝日 2012年4月27日号