進展が期待される沖縄の普天間問題。自然環境の面から見ても辺野古移設は理解できない、と生物学者である池田清彦早稲田大学国際教養学部教授はいう。

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 嘉手納への統合案に沖縄県側が強く反対する理由が私にはよくわからないが、少なくとも辺野古への移設よりはマシではないか。

 嘉手納への統合案では土建業者が儲からないといったウラの事情があるのかどうか私はよく知らないが、辺野古のある大浦湾では2009年に少なくとも36種の新種と覚しき甲殻類が見つかっており、ここに飛行場が建設されれば、生物多様性への侵襲は極めて大きい。沖縄の海岸線は相次ぐ土木工事によって大きく改変されており、これ以上の自然生態系の改変は避けなければならない。

 たとえば、沖縄には人工ビーチが38ヶ所もあるが、土建業界の金儲け以外にはさして役に立つとも思われない。自然の海岸線であっても別に困らないのに、わざわざ金をかけて自然破壊する心性がわからない。

 普天間は危険、辺野古移設は自然破壊であることは明白なのだから、とりあえず嘉手納に統合する他に術はない。脱原発の問題と同じで、この国の人々には合理的という思考が最初(ハナ)からないようですな。

※週刊朝日 2012年4月13日号