山梨県知事が名指しで噂されている。行政委員の職に選任された会社社長から計300万円分の仕立券を受け取った―山梨県警や地元メディアの関係者は口をそろえて断定する。だが、名指しされた県知事にはおとがめがなく、疑惑を捜査した県警幹部は7年前の不貞を理由に重たい懲戒処分を食らわされた。刑事や記者が嘆く山梨県の"病魔"をリポートする。

 山梨県警の輿石靖警務部参事官が県警記者クラブを訪ね、県警幹部の女性スキャンダルを自ら"暴露"したのは、昨年12月2日のことだった。地元メディアは大騒ぎした。名指しされた南甲府署長のN警視(57)は12月2日付で警務部付に、16日付で停職6カ月の懲戒処分を受けて依願退職したが。県警幹部のスキャンダルを糾弾する"狂騒曲"は年の瀬まで続いた。

 だが、いま県警内部や地元メディアの間には、冷めた見方が広がる。スキャンダルの中身と発覚の経緯が、あまりにも不自然すぎるからだという。N氏も本誌の取材に対し、親族を通じてこうコメントした。

「今回の件については当初から『罪に問われるような行為はしていない』と一貫して説明し、それが認められています。自身への処分については納得はしていません。また、自分がかかわった捜査の内容は口外できませんが、7年も前の事案が今になって取りざたされたのは、何か意図を持った人間に仕組まれたのだろうと考えています」

 ある捜査関係者は、

「N氏は最近まで、知事の贈収賄疑惑を捜査指揮していました」

 と話し、こう続けた。

「2010年夏、Nさんが当時署長を務めていた笛吹署は、県警本部の捜査2課と合同で有力県議の長女を公選法違反で逮捕するなど、実績を上げて勢いに乗っていた。そこへ笛吹署の優秀な刑事が掴(つか)んできたのが、葬祭業者の社長が知事に金券を贈っているというネタ。すぐに署の一室に帳場(捜査本部)が設けられ、捜査2課の知能特捜班が20人近い専門部隊を動員して内偵捜査に入った。2課の人員の大半を投入し、年内の立件を視野に入れるほどの本気度だったそうです」

※週刊朝日 2012年4月13日号