これが1問115万円の答えなのか――。目を疑うほどお粗末な報告書が3月30日、資源エネルギー庁から発表された。

 この報告書は、ブログや掲示板などインターネット上で、原発や放射能に関する書き込みを収集し、"正しい"回答をQ&A形式でまとめている。約7400万円かけて、エネ庁が広告会社「アサツー ディ・ケイ(ADK)」に委託した。

 当初からネット監視だと批判が集まっていたため、この日の閣議後会見で枝野幸男経済産業相は、報告書がまとまったことを明らかにした上でこう陳謝した。

「国民のみなさんにインターネットを監視するような印象を与えたことは遺憾であり反省している」

 だか、もっと批判が集まりそうなのはその中身だ。報告書には64のQ&Aが盛り込まれたが、1問目は、〈牛肉は安全なのでしょうか。仮に放射性物質に汚染された牛肉を食べた場合、健康への影響はあるのでしょうか〉

 というもの。答えは、

〈一時的に飲食したとしても健康への影響は心配ありません〉

 というお粗末な内容だ。

 64問で7400万円なら、単純計算すると1問は約115万円になる。

 この事業は「不正確情報対応事業」と名付けられているが、不正確情報として選別する基準や、対象としてネット上のサイト名、調査会社名、回答の執筆者名など肝心なことは伏せられている。

 そこで、エネ庁原子力立地・核燃料サイクル産業課の武田龍夫広報官に尋ねてみたが、その回答もお粗末なものだった。

―――キーワードは誰が決め、エネ庁はどんな注文をしたのか。

「決めたのはADK。どんな話をしたのかは覚えていない。キーワードは手元にない」

 ADKは政治関連情報も収集し、国会議員のツイッターやブログも対象にしていた。巨額を当時、ありふれたQ&Aを作った本当の目的は何だったのか。

※週刊朝日2012年4月13日号