福島第一原発で事故対応にあたった最高幹部の一人が取材に応じた。最高幹部は地震直後からメモを書き残していた。そのメモをもとに、当時を振り返った。

 2011年3月11日金曜日。平穏な週末の一日だった。仕事が終わったあと、知人と食事に行く約束をしていた。しかし、あの一瞬を境に悪夢の日々に変わっていく。

 手帳のメモは日々の備忘録で、毎日欠かさず、丁寧な文字で書いていた。しかし、地震直後のメモは、乱暴な文字になり、ひらがなやカタカナ、漢字、ローマ字が混在していた。

 地震後、最初のメモにはこう書いてある。

〈2:44 地震 オオきくゆれ、かつてない、ゆれる〉

 実際に地震があったのは「2時46分」だが、そのときは混乱していたのだろう。メモには「2時44分」となっている。

 地震が起きたときは、ちょうど会議中で、原発技術員の幹部たちが顔をそろえていた。とんでもない揺れだった。最初は、いったい何が起きているのか、わからないほどの揺れだった。腰が抜けるかと思った。

*今西憲之+週刊朝日取材班著

『最高幹部の独白~福島原発の真実』

より抜粋

週刊朝日