1997年~2004年度に、読売巨人軍が契約した新人6選手との契約金総額が、最高標準額(1人1億円と出来高払い5千万円)を大きく上回る36億円だったと朝日新聞が報じたのは3月15日のこと。以来、読売新聞は折に触れ、社会面で反論記事を掲載している。

 21日朝刊はこうだった。

《読売巨人軍の選手の契約金について朝日新聞が大々的に報道した翌日に、プロ野球選手の契約実態などを暴露した巨人軍元代表・清武英利氏の著書が発売されたことが、「不自然ではないか」という疑念を呼んでいる》

 主語がなく、誰が抱いた"疑念"なのかは不明だ。同紙社会部OBのジャーナリスト・大谷昭宏氏はこう語る。

「天下の読売がこういう記事を作るのかと驚いた。そもそも、もっと他に大きく伝えるべきニュースはなかったのか」

 20日には、ミスターこと長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督が紙面に登場し、「誰が内部資料を渡したのか」「選手たちの心の傷は相当に大きい」などと、朝日新聞の報道を厳しく批判した。

「こんな話に、球界の至宝を引っ張り出すなんて。プロ野球ファンは悲しみますよ」(前出の大谷氏)

 連日の反論は、朝日新聞への「情報提供者」捜しが主題になっているようだ。なぜか清武前代表の名前を繰り返し挙げ、たびたび球団OBや球界関係者の批判的なコメントとともに掲載している。前出の大谷氏はこう語る。

「内部告発などの情報提供者は守られるべきで、読売新聞もそうした情報をもとにニュースを発信してきたはず。取材源の秘匿は新聞社の命綱。それを明かそうとするなど、報道機関の自殺行為です。『栄光の読売社会部』は昔のことになってしまったのか」

※週刊朝日 2012年4月6日号