63歳という年齢ながらもいまだ、トップバレリーナとして踊り続ける森下洋子さん。20歳の頃、それまで指導を受けていた師が病で倒れた。これからという時期に、自分にベストな指導者を模索。その頃、海外のバレエ団から主役のオファーが。しかし、森下さんはそれを断ったという。

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 海外のバレエ団から主役へのオファーがありましたが、どうしても心に刺さらなかったんです。当時は、日本人が海外のバレエ団で踊れるなんてことは夢のまた夢のような話。ですが、自分でも決定的な理由が見つからず、「私、日本人なので、日本で踊ります」って言って帰ってきちゃった(笑)。バレエのことで口を出したことのない母ですら、「あら、もったいないわねぇ」と言ったくらい(笑)。

 帰国後すぐ、21歳のとき、松山樹子先生の「白毛女」を見に行き、瞬間的にコレだ!って思いました。鳥肌が立つほどの圧倒的な存在感。「私はここでもっと勉強をしたい!」とはっきり確信し、松山先生に入団のお願いをしました。

 とはいえ、バレエ団の移籍は大問題です。一度は押しとどめられましたが、私の熱意を理解してくださり、1年後に周囲の批判を一切シャットアウトする形で、入団を受け入れてもらいました。

※週刊朝日 2012年3月30日号