震災から1年経った今でも続く、福島県産農作物の風評被害。福島県二本松市の農家も苦しんできた。3月11日、そんな彼らとシンポジウムを行った田原総一朗氏はこう語る。

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 昨年秋に、セシウムの濃度が基準値を超える福島産の米が次々と発見され、そのことをメディアが大きく報じた。

 このことによって福島の農産物はパッタリ売れなくなった。

 このときから、福島に残る農業従事者たちの本当の闘いが始まった。彼らは、地表を汚したセシウムを取り除くために農地を30センチ以上掘り起こし、地表部分の土を底に埋めた。放射線量を測定器で事細かに計測し、徹底的に数値を明らかにした。

 顔と顔でつながる新しいネットワーク作りも始まった。県庁や市役所など、役人の言うことは信用できないという人でも、農業従事者と対面することで、農家AあるいはBなら信用できるという直接のつながりを生んだ。そこから消費者同士の口コミがじわじわと増えているのである。

 シンポジウムに参加した農業従事者たちは、顔と顔のネットワークが広がることで、改めて福島で農業を続けることの意義、使命感を感じるようになってきたと語った。

 昨年、カタカナの「フクシマ」が全世界に広まったが、それを元通りの「福島」に戻すことが自分たちの務めだとも話している。

※週刊朝日 2012年3月30日号