発生から1年がたった東日本大震災。被災地福島で母親たちの様々な悩みをつぶさに見てきた福島大学行政政策学類の西﨑伸子准教授は、自身も小さい子どもをもつ親。「寄り添う」ことをテーマに複数のプロジェクトにかかわっている。

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 昨年12月から運営している「福島の子ども保養プロジェクト」は、福島から避難できずにいるお母さんと乳幼児を対象に、放射線量の低い温泉地などに短期保養に行ってもらう活動です。大学と県の生協連、日本ユニセフ協会が協力し、毎月20組の母子を招待しています。

 お母さん方は放射線に対して大きな不安を抱いたままです。低線量地域の温泉旅館に着いても、マスクを外せない母子がいっぱいいました。私たちが大丈夫だと伝えてもなかなか外せないほど、心理的に追い詰められていたのです。あるお母さんは、2回目の保養で初めてマスクを外し、「のんびりできました」と言ってくださいました。

 3・11から1年、2年と過ぎるにつれ、お母さんたちに対する支援や意識はしぼんでいくでしょう。私たちのような草の根活動の限界も見えてきていますから、今後は行政や国に対して政策提言をしていく必要があります。自ら立ち上がり、行動するお母さんも増えてきました。本当の復興は、1年を過ぎた今から始まるのだと思います。

※週刊朝日 2012年3月23日号