屋根に乗り上げたバスや倒壊したビル 被災地が下す"震災遺構"の判断 |AERA dot. (アエラドット)

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屋根に乗り上げたバスや倒壊したビル 被災地が下す"震災遺構"の判断

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 汚染された瓦礫の処理問題が世間で騒がれている。しかし一度、瓦礫が片付けられ更地に近づいていくなかで現地の復興計画で新たに挙がるのが"震災遺構"の扱いだ。

 いち早く昨年5月に撤去されたのは、岩手県大槌町の民宿の屋根に乗り上げた遊覧船「はまゆり」。そして3月10日には宮城県石巻市雄勝町の公民館に乗り上げたバスが撤去される。石巻市役所雄勝総合支所の担当者はこう話す。

「住民感情が第一。見たくない人が多いし、バスは今となっては鉄屑。海水をかぶっているから保存も難しいんです。ただ、向かいにある雄勝硯伝統産業会館ビルは残す予定です。5階建てで、3階まで浸水した跡が残っています。雄勝硯と復興のシンボルにしたい」

「いまの一番の問題は、高台移転と学校の再建。速く復興計画がまとまらないと、住民が戻らなくなる」

 と、この担当者は焦る。役所の職員も被災者。"震災遺構"のことまで手が回らないのが現実だ。

 一方、保存で話が進んでいるのは同県女川町。更地が広がる町内には、鉄筋コンクリート造のビルがゴロッと三つ転がったままだ。そんなことは世界的にほぼ前例がない。海外から来る調査団も多いという。

 東北大学大学院教授で建築評論家の五十嵐太郎さんは、女川町の倒壊ビル保存を訴える一人だ。

「倒壊した建物は、世界史的な意味を持ってしまった。われわれのためというより、これから生まれる人のために残すべきでしょう」

「壊すという判断は、慎重にすべきなんです。一度壊したら取り返しがつかない。今は"とりあえず壊さない"という決定が大事。あとはゆっくり考えればいい。時間とともに、答えは出てきます」

 モノにしか語れない、悲劇とその教訓も、あるのかもしれない。

※週刊朝日 2012年3月16日号


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