いま、福島第一原発は"小康状態"に見える。政府は昨年末、原発の「冷温停止状態」を宣言し、「原発の収束」を強調した。しかし、本誌は知っている。彼らが、さまざまな情報を封印してきたことを。

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 あの日から、もうすぐ1年になる。

 もう過去のことは思い出したくもないかもしれない。しかし、あのとき何が起きて、何をしたのか、それを検証し続けることは、この苦難を未来の教訓とするために必要なことである。

 米原子力規制委員会(NRC)は2月21日、震災直後(昨年3月11日)から10日間の、フクイチ(福島第一原発)事故の対応を巡る会議や電話でのやりとりを記録した3千ページを超える内部文書を公開した。

 その詳細な記録は、この歴史的重大危機の際に米国がどう動いたかを伝える貴重な資料だ。

 一方、日本では、原子力災害対策本部をはじめ震災関連の10の対策会議で議事録が作成されていなかった。議事概要すらない会議もあったというのだから、唖然とする。お決まりの「無責任体質」である。

 いったい何なんだろうか。東京電力に公的資金が注入され、実質的に"国有化"されれば、国は最終的にさまざまな賠償責任を負うことになりかねない。税負担をする国民からすれば、政府や省庁、そして東電での議論は、オープンな形で記録に残されていて然るべきである。記録がなければ、何の検証もできず、信用することはできない。

※週刊朝日 2012年3月16日号