東京・板橋区立美術館で2月25日から「安野光雅の絵本展」が始まった。安野氏は皇后美智子さまの4冊の本を装丁している。今回は、装画の展示も宮内庁から特別に許可された。展示会の開幕を記念し開催された、安野氏と編集者・末盛千枝子氏の対談のなかで、歌人として本も出版する美智子さまのエピソードが語られた。

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安野:何年か前に相模女子大の先生から「いちばん奇麗な日本語を話すのはどなただと思いますか」と質問を受けたことがあります。何人かアナウンサーの顔が浮かびましたが、「皇后美智子さまですよ」と言われてハッとしました。その直前にインドのニューデリーで行われたIBBY(国際児童図書評議会)の世界大会用に、皇后さまがビデオレターを作られました。そのときの日本語は完璧でした。やはり、歌人はちがうと納得しました。
(中略)

安野:若いときは美しかったし、年をとられてより美しくなられました。東日本大震災があって発表された歌で、両陛下の歌がとてもよかった。5・7・5・7・7の言葉であれだけの表現をするのは才能です。『折々のうた』の大岡信さんが最高の歌人と褒めていました。

末盛:今年の歌会始の歌はまた素晴らしかった。

帰り来るを立ちて待てるに季のなく岸とふ文字を歳時期に見ず

 皇后さまは数千の歌を作っておられるのに、本になったのは『瀬音』だけ。もったいないような気がします

(注=歌にある「季」は「とき」)

※週刊朝日 2012年3月16日号