福島県いわき市で炭鉱閉山後、温泉に新たな活路を求めて設立されたスパリゾートハワイアンズ。三月十一日の地震で被災した。別の取材でそこに居合わせたフリーライターの清水一利さんが取材を続け、十月の営業再開までの道のりを描いた『フラガール 3.11 つながる絆』を出版した。

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 震災直後、ある社員は「うちは大丈夫だから、会社行け!」と父に言われて休日出勤し、別の者はタンスの服が取り出された様子から家族の無事を信じて職場へ戻った。集まった社員は、首都圏の客など交通を遮断された八百五十四名のため、備蓄食料でパーティー同等の食事を用意し、また情報不足の中、自らが走行して通行可能な一般道を調べ、無事送り届けた。その後、夏の営業再開を目指すが、四月の震度6直下型余震で本震を上回る建物被害を受け、延期。復旧するまでの間、「フラガール」が全国各地で公演し、笑顔と希望を届けた。彼らの中には津波や原発事故で避難中の者もいる。

 自らが被災しながらも、お客様や地域のため尽力するスタッフの姿が胸を打つ。根底には今もヤマ時代の「安全第一」と「一山一家」の精神がある。

(川副早央里)

※週刊朝日 2012年3月9日号