イギリスの二大政党制やフランスの少子化対策など、日本でお手本としてもてはやされている手法は本当に優れているのか。現地で暮らす各国の日本人が、お手本の国の実情を新書『「お手本の国」のウソ』でレポートしている。

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 学力世界一を生んだ教育システム「フィンランド・メソッド」。ところが、フィンランドにフィンランド・メソッドはない。教師が授業内容に大きな裁量権をもち、教科書も教師自身が作るなどのやり方を日本人がそうよんだだけ、肝心の教育の中身は教師の創意と努力がものを言う。必ず成績が上がる絶対のマニュアルではないのだ。

 フランスの出生率回復に効果をもたらしたのも少子化対策ではなく、育児休暇中の所得補償など女性の雇用促進策だし、アメリカの陪審員は硬い木の椅子に毎日八時間座らされ、日当たったの十五ドル(約千円)。不機嫌のかたまりと化している陪審員の裁定が本当に公正かどうか、大いに疑問という。

 知恵を絞る努力をはしょって、答えだけ拝借したがる日本人の悪い癖にちょっと苦笑い。

※週刊朝日 2012年3月9日号