2月9日に、神戸市の「日の出タクシー」の破産手続きが始まると決まった。信用調査会社・東京商工リサーチによると、この会社を含めて14社が2007年夏以降、連鎖的に倒産した。

 きっかけは06年1月、日の出タクシーなどが加入する「兵庫県乗用自動車厚生年金基金」が解散したことだ。資金の運用利回りが低迷し、高齢化で給付額も増えたことで、財務状態が悪化したことが背景にある。

 そもそも、会社員の年金には、【1】全国民を対象とする基礎年金、【2】所得に比例する厚生年金、【3】厚生年金基金が独自に上乗せする企業年金などがある。

 先に触れた基金では、将来の年金給付に備えた積み立てが不足していた。純資産額は【2】の部分、国の制度である厚生年金の代行に必要な準備金の金額にも満たなかった。これを「代行割れ」という。こうした基金が解散する際には、不足分を加入企業で穴埋めする義務が生じる。加入50社は中小企業が多かったこともあり、一括で納めたのは21社で、残りの会社は分割を選んだ。

 しかし07年夏、分割を選んだ1社が、この負担に耐えきれずに破産してしまう。この会社の未納分は、なんと「連帯責任」として分割納付中の会社が背負わされた。そう決まっているのだ。1社また1社と倒産するにつれて、生き残った会社の負担がどんどん重くなり......という悪循環に陥ってしまったのである。

 厚生労働省によれば、昨年度時点で「代行割れ」、すなわち穴埋めが必要となる基金は全体の36%、213にものぼる。基金全体でみると、昨年度には給付金が掛け金よりも1割以上多く、いわば「赤字」の状態になっている。「赤字」の金額は前年度に比べて1.9倍にも拡大した。

※週刊朝日 2012年3月9日号