現在運転を停止している福井県の大飯原発3・4号機について、その再稼動のために関西電力が実施した安全評価(ストレステスト)の1次評価を、原子力安全・保安院が「妥当」とする審査書をまとめて、2月13日に原子力安全委員会に提出した。だが、その再稼動の流れに原発の即時全廃を訴える作家・広瀬隆氏は福井が第二の福島になる可能性を指摘する。

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 アメリカの原発技術者としてすぐれた頭脳を持ち、フクシマ事故について数々の事実をインターネットを通じて日本人に伝えてきたアーニー・ガンダーセン氏が、今月『福島第一原発――真相と展望』(集英社新書)を発刊した。それを読むと、これから全土の子供たちの体に何が起こるかを想像したくないほど、寒けがする。東電は、「チェルノブイリより被害が少ない」、保安院も「放射能はチェルノブイリの1割程度だ」などと主張していたが、福島第一原発から漏洩した放射能物質はチェルノブイリよりはるかに多いとしてもおかしくないとしているのだ。たとえばチェルノブイリの2倍だとすれば、国の発表の20倍の放射能が放出されたことになる。その根拠として、東電は放射性物質が水に取り込まれて除染されたという誤った仮定で計算しているが、福島第一原発では水が沸騰していたので、すべて放出されているし、格納容器からの漏洩も計算していないので、まったく間違った推算であることが論証されている。

 こうなると、福井県の大飯原発3・4号機を、フクシマ事故を引き起こした最大の責任者であるド素人の保安院と原子力安全委員会のゴーサインで再稼動することが、どれほどおそろしい結果を招くかについては、誰でも想像できる。言い換えれば、事故が起こる確率は限りなく高く、その事故があればまず最初に、福井県の地元民が、フクシマ県民に続いて、壮大な放射能被爆のモルモットにされるのだ。

※週刊朝日 2012年3月2日号