現在運転を停止している福井県の大飯原発3・4号機について、その再稼動のために関西電力が実施した安全評価(ストレステスト)の1次評価を、原子力安全・保安院が「妥当」とする審査書をまとめて、2月13日に原子力安全委員会に提出した。だが、その再稼動に小浜市民は怒りの声を上げていると原発の即時全廃を訴える作家・広瀬隆氏は言う。

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 ストレステストによる再稼動では、地元の了解を得ることになっているが、その地元とは一体誰のことなのか。国側は、大飯原発のある「おおい町」と福井県、この二つの地元自治体だけから了解をとりつければよいとしているが、実際の地元は、この二つだけではない。大飯原発から半径10キロ以内に住む地元民は、おおい町が4500人に対して、原発を目の前にする小浜市民はその3.5倍の1万6000人もいるのだ。半径10キロ以内とは、最悪の事故があった場合「ほぼ100%の住民が早期に死亡する」とされている超危険エリアである。ところが小浜市は地元とみなされず、このように関西電力(関西経済圏)の電気のために殺される候補者にだけ挙げられている。

 では小浜市民は、大飯原発の存在をどう考えているのか。今回の再稼動の対象となった大飯原発3・4号機は1985年に電源開発調整審議会で建設のゴーサインが出て建設されたが、その前年におこなわれた全戸調査によるアンケートでは、実に86%の市民が建設に反対、という結果であった。もともと小浜市民は拒否してきたのである。だからこそ昨年6月に、小浜市の市議会が「原発からの脱却を求める意見書」を全会一致で可決したのではないか。「俺たちは猿回しの猿ではないぞ」と怒っているのだ。

※週刊朝日 2012年3月2日号