脱原発がうたわれる一方で、電力不足も叫ばれている日本。「脱原発」へと向かうには、どのような道をたどるべきなのだろうか。生物学者で環境問題についての著書などを出版しているの池田清彦氏は次のように話す。

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 脱原発は反原発とは違う。電力の安定供給のためには、しばらくの間は原発を稼働せざるを得ないが、代替の発電装置が出来上がったら、その分原発を止めて徐々に廃炉にしていこうという話なのだ。

 最終的には自然エネルギーに切り替えるのは悪いアイデアではないが、今の所自然エネルギーは効率が悪い(という意味は高価だということ)。いきなり切り替えるとコストがかかる。

 今冬の寒さで、温暖化より寒冷化の方がよほ大変だと身に沁みてわかったろうから、火力発電所を建設してCO2が多少排出されても、まともな国民は文句を言わないだろう。

 現時点では、天然ガスを使うガスタービンが一番使い勝手が良いと思う。非在来型の天然ガスであるシェールガスの埋蔵量は在来型のそれを上回ると考えられ、日本近海の海底に眠るメタンハイドレートを首尾よく開発できれば、新エネルギーが安くなるまで当分は凌げるはずだ。

 できることなら廃炉予定の原発の隣に建てるのが一番良い。送電線は使えるし、雇用も確保できる。原発を建設する代わりに火力発電所を建てても、発電規模が同じならば同額の交付金が地元に落ちるようにしておけば問題は何もない。

※週刊朝日 2012年3月2日号