橋下徹大阪市長は2月14日、「大阪維新の会」の基本方針(政権公約)にあたる「船中八策」を発表した。年金制度の抜本的改革として、予告していたとおり、「積み立て方式や掛け捨て方式への移行」を盛り込んだ。

 若者世代が高齢者を支える現行の「賦課方式」では、受け取り側の高齢者が増えていく時代にあって破綻は確実、高齢者激増に対応し得る制度に移行していこう――という改革案になっている。

 一方、野田佳彦首相はどうか。投票率が高い高齢者の反発必至の年金制度改革を先送りしたまま、一時しのぎにしかならない消費税増税に邁進している。 

 2月13日の記者会見で輿石東幹事長に、積み立て方式への移行について聞いてみると、

「橋下市長の考えも貴重な意見。心配のない年金制度に作り変えていくために、いろいろな意見を採用していける協議の場を作りたい。これが民主党の主張です」

 と回答した。しかし、小黒正一・一橋大学准教授はこう言う。

「高齢者増加のピークに合わせて社会保障費を少し多めに集めていく事前積み立て方式であれば、今すぐ導入が可能です。これによって約9千万円の世代間格差が3分の1に是正されます。今の社会保障制度のままで消費税増を行っても、世代間格差の改善効果は薄く、高齢者優遇(高福祉)、若者冷遇(高負担)は温存されるのです」

 そこで小黒氏の数字を紹介しながら、「現行の民主党案で世代間格差がどれくらい是正されるのか」とたずねてみたが、輿石幹事長は、「それを私に聞かれてもわからないでしょう」と開き直る始末だった。

 社会保障費増大に対して、消費増税しか打ち出せない野田政権。橋下市長への支持が急上昇するのは、民主党の体たらくの裏返しと言えるだろう。

※週刊朝日2012年3月2日号


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