現役世代の負担だけでは、高齢者を支えることができなくなった厚生年金。40年払い続けても、6万円台しかもらえない国民年金......と、問題が山積している現在の年金制度。政府も「一体改革」と銘打って取り組んでいるが、実際のところどれだけの効果が見込めるのか、未知数の部分も多い。そんな中、ニュース解説などでおなじみの辛坊治郎氏が自身による「年金改革案」を打ち出した。皆さんはこれをどう受け止めるだろうか。

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 年金の諸問題を一気に解決するために、基礎年金を消費税で賄う民主党の方針は間違いではない。問題はそれにいくらかかるかだ。

 現在の国民年金受給者は約3千万人。この全員に毎月7万円を配ろうとすると、7万円×12カ月×3千万人で、約25兆円だ。現行制度で少なくとも建前上は、基礎年金の半分を税金で賄うことになっているので、新たに必要となる金額を仮にその半分とすると、消費税にしてちょうど5%分だ。つまり5%の消費税を全部投入するつもりなら、今すぐに65歳以上の高齢者すべてに7万円を配れることになる。

 しかし、この制度を明日から始めようとしたときに、最大の問題が横たわる。それは、まじめに年金掛け金を払ってきた人と、一円も払ってこなかった人の不公平感だ。これを解消するためには、掛け金の支払期間に応じて額を上乗せするしかない。現在でも基礎年金の半分は税金で賄われているから、掛け金相当分として、国民年金加入者の場合、満額で現基礎年金の半額(約3万円)の上乗せなら妥当な線だろう。積立金はそのためにある。また、厚生・共済年金の報酬比例部分は現在のままでいいと思うが、月額20万円を超えるような場合、支給を一部カットすることは当然考慮されるべきだ。細部の設計は、思想がしっかりしていればどうにでもなる。

 さあ、この提案を皆さんはどう受け止めるか?

※週刊朝日 2012年3月2日号