消費税率の引き上げなど、日本の財政再建策に注目が集まっている。しかし、日本の経済政策には欠けているものがあると、投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める「伝説のディーラー」藤巻健史氏が指摘している。

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 日本はバブル崩壊以降、金融政策や財政政策を最大限発動してきたにもかかわらず、景気が全く回復していない。名目GDP(国内総生産)が20年間ちっとも伸びていないのだ。私に言わせるとこの原因は簡単で、為替政策を発動してこなかったからだ。

 金融政策や財政政策を発動しても、景気は円高という頑強な天井に跳ね返されてしまったのだ。景気回復の方策をめぐり、いろいろな専門家がいろいろな提唱をしてきた。しかし、おおもとが抜けていた。為替である。

 棒高跳びの世界記録を狙うとなると、材料の専門家はポールの質の改善を提言する。ユニホームメーカーはユニホーム改良を提言する。靴メーカーは軽い靴、コーチはフォームの改造を提言する。しかし、踏み切る部分のグラウンドがどんどん沈下していったら、世界記録達成など無理なのだ。

 そして、無策のせいで円は実体経済レベルよりはるかに高いバブル状態となってしまった。穏やかな円安政策で経済を軌道に乗せるのが理想だったが、いまやハードランディングの可能性が出てきたのだ。

※週刊朝日 2012年2月17日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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