「セメントは原料となる下水汚泥の汚染が見つかったため基準を作りました。砕石や砂利は汚染が確認されたわけではなく、そこまで話が進みませんでした」

 何ということか。これではすべての対応が後手に回り、稲わら、砕石に続く第三の「想定外」が出るのは時間の問題だろう。

 前出の福士教授も言う。

「今のような対応を繰り返していると、汚染地域から持ち出された原材料で、意図せずに人工的なホットスポットが増えていく可能性があります。それを防ぐためにも、汚染が懸念される地域から出荷される原材料は何であれ、逐一放射線量を測るようにすべきです」

 それにしても不気味なのは、コンクリ汚染が簡単には終息しそうにないことだ。福島県産の砕石は、10年は3991トンのうち、宮城県に278トン、栃木県に150トン、神奈川県に14トンなど一部は県外にも出荷されている。稲わら汚染のときのように、全国に広がる恐れはないのだろうか。

 主要な建設会社や住宅・不動産会社に、汚染された砕石や砂利を使っていないか尋ねてみたが、「これまでの調査では、問題となった石は使っていなかった」とした大和ハウス工業など一部をのぞき、「調査中」という回答だった。

 不動産の市場調査を手がけている東京カンテイの中山登志朗・上席主任研究員は言う。

「牛肉なら個体識別番号で産地をさかのぼれますが、コンクリートや砕石などにはそうした仕組みはないし、元請けも、下請けや孫請けがどこの石を使ったかまでは把握していない。各社とも調べているでしょうが、全容を把握するまでにはもう少しかかるでしょう」

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