顔見知りの弁当屋のベテラン店員は、近所のスーパーで一人、買い物している明美容疑者の姿を目撃したこともあった。

「夜はちゃんと家で作るんやなと思いました」(店員)

 給与は家賃などを差し引いて月20万円近くで、現金で手渡されていたという。安定した仕事、住居は、逃亡を続ける女性に心の余裕を与えたのだろうか。

 整骨院近くの化粧品店の50代女性店主は言う。

「マジメでええ子やったなぁ。誰もが言うやろ。言葉遣いが丁寧で上品やった。お年寄りには優しくて、よく外でも声をかけとったで。色白で細くて背が高く、いつも薄い化粧なのに、手配写真よりもずっとキレイやった。肌が弱いって言うて、ファンデーションなどの基礎化粧品はコーセーを選んどったな。白衣姿のまま自転車で通勤しとって、昼休みにも昼食のために自宅に帰っとった。シンプルな生活やったで」

 整骨院の利用客でもある女性店主が続ける。

「初めは事務の仕事やったけど、そのうちマッサージの資格を取ったんか、患者のマッサージもしとった。院長の診察があると追加料金がかかるから、あの子のマッサージだけ受けて千円払って帰る人も多かった。これがまた上手でな、私も『待つから吉川先生、お願いな』と彼女を指名しとった。院長は男やから強すぎる。彼女のほうは細いなりに力はあって、これがツボによく入ってくるんや」

 明美容疑者は月曜日から土曜日まで働いていた。午前の診療が終わるのは午後2時ごろ。午後の診療は午後4時に始まり、終わるのは夜10時前後だった。

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