元警察庁キャリア官僚で、麗澤大学教授の大貫啓行氏はこう語る。

「震災後の流言飛語、原発事故の風評被害を食い止めるために、ネット社会に対して警察権の発動を強めたことは確かでしょう。しかし、ネット言論に刑罰権を行使することに対して、警察当局はもっと慎重になるべきです。自由な言論社会に対して、警察組織は打つ手がなくなるまで表に出るべきではない。IT分野なら経産省や文科省が前面に出て行政指導をすべきで、警察はその後方支援でいい。国民がすぐに警察に頼ろうとする姿勢、それを受けて警察が安易に刑罰権を行使しすぎていることに懸念を抱いています」

 前出の警察庁関係者は最後にこうつぶやいた。

「この事件は来年に持ち越して長くなりそうだ。威信がかかっている。展開があれば人員を増強する可能性もある」

 どうやら、様相は「警視庁対2ちゃんねる」という構図にとどまりそうにない。当局の動き次第では、ネット社会は2012年、"激震"に見舞われるかもしれない。(本誌・作田裕史)

■ネット上の違法情報は、その後どうなった?■

違法情報                        処理結果件数

                        警察庁へ通報/削除依頼/削除完了

わいせつ物公然陳列                 6186/3273/3187

児童ポルノ公然陳列                 1055/464/438

売春あっせん目的の誘引                 2/2/2

出会い系サイト規制法違反の禁止誘引行為    456/218/211

薬物犯罪等の実行又は規制薬物の乱用を、公然、あおり、又は唆す行為

                              159/81/23

規制薬物の広告                   3785/2899/305

預貯金通帳等の譲渡等の誘引         501/436/117

携帯電話等の無断有償譲渡等の誘引     259/155/72

合計                      1万2403/7528/4355

 (財団法人インターネット協会調べ)


週刊朝日