雑誌や新聞からインターネット上に"監視"の場所を移した資源エネルギー庁の広報だが、今年6月に入札募集をした「原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)」の執筆者が相次いで辞退。事業の継続が危ぶまれている。

 不正確情報対応事業とは、ツイッターやブログなどから原子力発電等に関する書き込みを収集。不正確な書き込み情報から質問を作り、正しい回答をインターネット上に公開するというもの。入札の事業目的にも「正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害を防止する」とある。しかし、何が正しい情報なのかを誰が決めるのか。新たなネット監視だと強い批判を呼んだ。

 この事業では、機械検索と人によるチェックで書き込みのやりとりを追跡。1日千件余りの"不正確情報"を収集して、質問作りの材料に使う。有識者の下で年度末までに100以上のQ&A(質疑応答)を作成して、インターネット上で公開する予定だったが、計画は目論見どおりに運ばず、どんどんズレ始めている。

 インターネット上に公開するQ&Aは、第1弾で目標の3分の1程度を掲載し、秋以降に順次増やしていく予定だった。だが、エネ庁の担当者によると、100のQ&Aができるかどうかも不明。しかも、「有識者の名前を出す予定だったが辞退をされる人が多く、回答を執筆してくれる人がいないと事業ができない」という理由から、匿名でQ&Aは作られる方向だ。

「有識者には一度集まってもらったが成果が出ず、それ以来、会合は開いていない」(同庁担当者)
 と"不正確の基準"さえ定められていない。

 それなのに、エネ庁はこの事業に単年度で7400万円をつぎ込んでいる。たった1問作るのに74万円もつぎ込んでいるのだ。

「日本語は難しく、キーワードで機械検索しても正しい結果が出るとは限らない。どういう書き込みにどういう反応があるのか、人によるダブルチェックが必要」

 担当者は慎重な情報収集を強調したが、見方を変えれば、これこそまさにネット監視であろう。しかも、原発事故前の同様の事業(即応型情報提供事業)が3年間で約4600万円だったことを考えると、焼け太りしている。

 なお、Q&Aの内容は原発の是非に触れず、放射線に関する話題が中心であることがわかった。

 ただ、放射線の健康被害ひとつ取り上げても、その評価は人により大きく違うもの。そこは「一つの質問と回答を多人数で執筆、仕上げるので中立性は保てる」(担当者)というのだが……。 (中島みなみ)

週刊朝日