瓶の中から検出された「ラジウム226」は半減期が約1600年と長く、かつてはがんの放射線治療や、時計の文字盤の夜光塗料としても利用されていた。それが、いったいなぜ床下から――。

 文部科学省放射線規制室の担当者は頭を抱える。

「昔はラジウムが非常に高価だったため、病院や大学などで大事にしまい込まれていた。今回はそうではなく、治療や塗料に使われた感じでもない。民家の住人も『初めて見た』と言っていますし、接点もない。見当がつきません」

 瓶には「日本夜光」の文字があった。この会社は戦前の塗料会社だという。

 民家の所有者は50年以上前から今年2月まで住んでいた。近所の女性(69)が言う。

「体の弱い奥さんと旦那さん、それに息子と娘がいた。子どもたちが結婚して家を出てからは、旦那さんが奥さんを看病しながら二人で暮らしていたの。でも10年ほど前に旦那さんのほうが先に亡くなっちゃった。それからは、奥さんが一人で暮らしていて、子どもたちが時々、様子を見に来ていたわ。奥さんはもう90歳くらいになりますね」

 文科省によると、幸いにも家主の女性に放射線障害は出ていないという。

 いずれにしても、今回、「ホットスポット」が見つかったのは、区民から保坂展人・世田谷区長に送られたメールがきっかけだったが、この騒動で"想定外"のことも露呈した。

 保坂区長がこう語る。

「今回わかったのは、東京都や環境省は何も考えていないということ。除染の仕方や汚染物の処理について問い合わせても、『各自治体に任せる』という以上の回答はなかった。特に東京都は『汚染はあり得ない』という立場のため、放射性物質が飛散した場合の対処方法やガイドラインが何も決まっていないんです」

 原発事故発生から7カ月。何をやっているんでしょうかね。

週刊朝日