こうした動きは国にとって好都合だったはずだ。特養建設には多額の公費がかかる。民間事業者に自前で建物を建ててもらえば、財政負担を減らせるからだ。

 だが、高齢者ホームの種類はいろいろで、かかる費用もサービス内容も違う。何をどう選んだらよいのかわかりにくい。自治体でさえ、その全容をつかめていないのが現状だ。

 にもかかわらず、国は新たな施設の類型を作っては、一定期間だけ予算を付けることを繰り返してきた。そのために「専門的なリハビリを受けるなら○○施設に」「認知症専門は△△へ」など、利用者から見れば状況は混迷するばかりだ。

 10月20日からは、「サービス付き高齢者向け住宅」という新たな類型が加わる。一定の設備を備え、安否確認や生活相談サービスが付く住宅だ。厚生労働省は、来年4月からスタートする24時間対応の訪問介護・看護サービスと組み合わせて普及させ、特養の待機者解消を狙う考えだ。

 しかし、高齢者ホームをめぐるトラブルは増えている。思ったようなサービスが受けられなかったり、払い込んだ入居金が退去時にほとんど戻らなかったりする例もある。

「終の棲家」を期待したはずが、認知症の症状が進行して追い出されることも少なくない。

 一方で、所得制限のない特養に高所得者が入り、低所得で介護の必要な高齢者の行き場がなくなっている。類型の乱発で施設ごとの違いがなくなり、要介護者は「入れるところに入っている」のが現状だ。

 国は複雑な類型を整理するとともに、特養は誰のためのものなのか、検討し直すべき時期に来ている。 (長岡美代)  <協力:タムラプランニング&オペレーティング>

 ■都道府県別に見た5年入居時平均月額(万円)

 北海道  18.3

 青森県   8.7

 岩手県  10.6

 宮城県  17.2

 秋田県  12.0

 山形県  11.2

 福島県  14.8

 茨城県  24.9

 栃木県  17.2

 群馬県  17.5

 埼玉県  24.9

 千葉県  24.7

 東京都  37.5

 神奈川県 31.6

 新潟県  17.7

 富山県  11.9

 石川県  14.6

 福井県  13.4

 山梨県  22.2

 長野県  14.6

 岐阜県  20.5

 静岡県  23.6

 愛知県  21.8

 三重県  12.7

 滋賀県  24.2

 京都府  34.4

 大阪府  21.7

 兵庫県  31.5

 奈良県  28.2

 和歌山県 14.1

 鳥取県  11.4

 島根県  10.7

 岡山県  15.0

 広島県  18.5

 山口県  12.1

 徳島県  10.5

 香川県  12.3

 愛媛県  12.9

 高知県  10.3

 福岡県  16.2

 佐賀県  11.1

 長崎県  10.7

 本県   9.6

 大分県  11.6

 宮崎県   9.7

 鹿児島県 16.0

 沖縄県  11.9

 (編集部調べ)


週刊朝日