せっかく入居しても、認知症が進み、徘徊や大声を出すなどの症状が出ると、退去を迫るホームもある。契約書や重要事項説明書に退去条件として「他の入居者の生活や生命に重大な影響を及ぼす場合」などと書かれているためだ。

「そうなると認知症にも対応してくれるホームに住み替えねばなりません。さらにお金が必要になります」

 高齢者住まいの相談・情報センター「あんしん住まいサッポロ」(札幌市)の西原桂子センター長は注意を促す。認知症に対応するホームもあるため、書面だけでなくホームの方針を確認しておくことが大切だ。

 さらに「終(つい)の棲家(すみか)」を期待するなら、看とりができるかどうかも確認したい。この場合は、ホームが協力医療機関とどのような連携をしているかがポイントになる。医師が24時間態勢で駆け付けてくれれば大きな支えになる。

 入居時に払う入居金はホームが定めた償却年数以内に退去する場合、一部が返還される。だが、その額はホームによって差があり、「思ったより少なかった」とトラブルになる例も多い。途中退去時にいくら戻るのかも事前に聞いておく必要がある。

◆格安ホーム◆

 一方、ホームの中には月十数万円前後で利用できるものもある。費用が安いとサービスも悪いのではないかと勘ぐりたくなるが、必ずしもそうではない。

 札幌市にある「水芭蕉」(居室数40室、現在満室)は、月額費用(家賃、管理費、食費)が9万4千円と格安の高齢者専用賃貸住宅(高専賃)だ。

 有料老人ホームのような高額の入居金がいらず、3万8千円の敷金がいるだけ。全室個室で、トイレやミニキッチンが付き、スタッフを呼ぶ緊急通報ボタンもある。共同利用できる食堂や浴室もあり、設備面は平均的な介護付き有料老人ホームと比べても遜色ない。

「地主に建物を建ててもらい、それを丸ごと借り受けることでコストを抑えました。高専賃の運営だけでは赤字ですが、併設の介護事業所の収入も含めて収支を考えています」

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