Bさんはタイで400万円程度あった貯金を治療に使い果たしたという。

「薬の副作用か、更年期障害のような症状になり、心身ともに疲れ切ってしまいました。タイに行く前は『そこまですればうまくいくはずだ』と大きな期待を抱いていたので、ちょっと夢を見すぎていたのかもしれませんね。でも、まだあきらめません。次は卵子の提供を受けようと思っているんです。でも主人が『他人の卵子は嫌だ。それなら子どもはいらない』って応じてくれなくて……」

 厚生労働省が07年に実施した「生殖補助医療技術に関する意識調査」によると、既婚者のうち「不妊に悩んでいる」または「過去に悩んだことがある」と答えた人の割合は、結婚期間2~3年で28%、4~5年で22・3%、6~9年で29・1%だったという。つまり、結婚10年未満の夫婦の2割以上が不妊に悩んだ経験があるということになる。

 Bさん曰く、彼女の知人には「タイで治療をしたい」という人が大勢いるという。

「不妊治療は成功するまであきらめられない自分との闘いなんです。子どもを願う一方で日に日に体は妊娠しにくくなっていく。同じ悩みを持つ人ならみな、試せる治療は今すぐに試したいと考えると思います」(Bさん)

 日本での治療に絶望した人にとって、タイは楽天地ではなく、新たな戦場なのかもしれない。(本誌・小宮山明希)

週刊朝日