9月20日の民主党税制調査会で、藤井裕久会長はこう言いました。

「増税があったときは国会議員のクビ切りとワンパッケージ」

 確かに国会議員は722人も要らないし、「一票の格差」は衆院では最高裁で違憲状態と指摘されている。定数削減は避けられない。

 しかし、増税とセットにするのは猿知恵もいいところです。野田政権はこれから着々と増税を進めていきますが、議員定数の削減は各党それぞれに思惑があり、結論が出るまでに時間がかかる。定数削減が進まなかったら「野党が抵抗した」と言い訳できる。役人がよく使う手法ですよ。

 先送りできる問題と進めたい政策をワンパッケージにして、後者を形にしていくんです。

「身を切る」覚悟を示すなら、第一義的には議員歳費のカットでしょう。震災復興に充てるため、歳費は4月から月々50万円ずつカットしましたが、これも9月いっぱいで終わりました。与野党が協力すれば、即座にカットの期間を延長する法案が通ったはずです。しかし、簡単にできることには手をつけず、定数削減を持ち出したのです。本音は明らかでしょう。

 各党から定数削減案は出されていますが、どれも中途半端です。

 民主党案は衆院の比例定数を80減、参院は選挙区と比例区で計40減。もっと削らなければならないし、衆院の比例を80減らせば小選挙区の比重が高まり、民主と自民だけが有利になる。国民の意見が正しく議席に反映されにくくなります。

 衆院について、自民は小選挙区を5減、比例を30減と言っていますが、単なるアリバイ作りでしょう。公明党は3案も出し、まとまりのなさを露呈しました。

 みんなの党は衆院を180減、参院を142減で、比例中心の選挙制度を提言しています。しかし、これはあくまで通過点です。道州制を導入して中央政府の仕事を減らし、最終的には一院制にして、議員数は今の3分の1ぐらいの200~250人に減らします。「小さくて賢い国会」を作るべきでしょう。

 各党から案が出ていても、議論が進んでいるとはいえません。次の選挙に新しい体制で臨むなら、周知の時間を考えると、次の臨時国会で決めないとダメです。国民にだけ負担を求めて、国会議員は今までどおり守られる。そんな状況になってはいけません。

     *

わたなべ・よしみ 1952年、栃木県生まれ。自民党時代に行革担当相、金融担当相を歴任。2009年1月に離党し、8月にみんなの党を結党


週刊朝日